本から明日をつくる

本と旅が趣味の大学院生です。色んなジャンルの本の感想とともに、旅の記録を書いています!

【書評】グローバル化に移民...これからの世界経済を読み解く~~エマニュエル・トッドほか『世界の未来-ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義』②

今回紹介するのはエマニュエル・トッドほか『世界の未来-ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義』(朝日新書)です。

 

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内容が濃いので前半はこちらの記事にまとめました!

honkaraasuwotukuru.hatenablog.com

 

さて、この本の後半は、資本主義を研究する経済学・社会学の大学教授ヴォルフガング・シュトレーク氏と、人の国際移動の研究で世界的に知られるジェームズ・ホリフィールド氏の講演・インタビューをまとめたものとなっています。

 

ヴォルフガング氏はグローバリゼーションに伴う国家システムの崩壊を、ホリフィールド氏は移民受け入れの重要性について説明しています。

 

 

ヴォルフガング・シュトレーク「資本主義の限界」

要約

  • グローバリゼーションが進む現代において、負債・不平等といった問題が浮上し資本主義は危機にある
  • 資本主義が民主的に統治されるためには、国の政府がグローバル化を管理してこれ以上グローバルに統合されることを避けるための「責任ある保護主義」をとる必要がある
  • EU統合が進んでいくのは幻想的で、EU内で富の再配分などが求められてくる

 

グローバル化はとめられるのか

これを読んで率直に思ったことは、果たしてグローバリゼーションの波を国家はとめることができるのだろうか、ということです。

個人的には、グローバリゼーションは全てとめることができないけれど、一部だけなら規制できると思っています。

 

どういうことかというと、グローバリゼーションによって移動が自由になっていくのは、カネ、ヒト、モノ、情報の4つです。

ここをごっちゃにしてひとつのグローバリゼーションとすると話は見えてこなくなります。

今回のヴォルフガング氏の講演は、「規律あるグローバリズムを」、と言っていますが、富の再配分がグローバリゼーションが進んでうまくいかなくなっていると言っていることから、特にカネの動きを政府が管理すべきだ、と言っているのかなという印象を受けます。

 

しかし、カネはブロックチェーンの発展などでさらに国境をこえやすくなり、ヴォルフガング氏が言うように国家がカネを管理するならば早急な対策が求められると思うし、なかなか難しい話だと個人的には思います。

 

また、モノは国境を越えるだけでなく、3Dプリンターの発展でどこでも同じモノをつくることできる未来が来るんじゃないかと思っています。

情報はインターネットやSNSがありますから言うまでもありません。

 

つまり、カネ、モノ、情報のグローバリゼーションはなかなか止められないと個人的に思います。

 

ただ、ヒトはどうか?

ここだけは規制できる、というか現状それをしたのが今のEUです。

そこに関して言及したのが、次のホリフィールド氏となります。

 

 

ジェームズ・ホリフィールド「分断の克服」

要約

  • 移民問題に対して安易な政策を行わない「勇気ある政治家」が移民問題を解決する
  • 社会や国家にとって移民は最終的に極めて望ましい存在となる
  • 日本も移民をもっと受け入れることで東、東南アジアの人々が更にやってくるようになって、そこから得られる利益は大きい

 

日本の移民問題を考える

以上のように、ホリフィールド氏は移民は経済的観点から受け入れていくべきだ、と述べています。

 

経済的利益の観点からしたら移民は受け入れるべき、それはその通りだと僕も思います。

ただ、それだけでうまくいかないから移民問題は難しいのです。

 

まず移民を受け入れることによって国民の雇用が損なわれるのではないかという心配が浮上します

移民を受け入れたら国力全体は向上するかもしれませんが、もともとその国に生まれた人々の生活を苦しめてまで行われるべきことなのか。

このことから、EUでも移民受け入れに完全にオープンになれなかったところがあるはずです。

 

また、日本の場合、事態はもっと複雑です。

日本は島国で単一民族国家だから、国民が他民族を受け入れることにどこか心理的抵抗をもってしまいやすい国です。

リフィールド氏は「人間社会には「壁」が不可欠だ」と述べていますが、まさに日本は海という大きな壁に四方を囲まれ、その上精神的な壁を構築しやすい国民性じゃないかなと思っています。

 

日本の場合、自由を公言して開かれた社会を追求するほど、その社会を守るために「壁」を築き閉ざされた社会になってしまうというホリフィールド氏が言うところの「リベラル・パラドックスが特に問題となってくる気がします。

 

正直この問題は難しく今すぐに答えを出すことはできなさそうです・・・。

 

 

まとめ

後半はグローバリゼーションに伴う資本主義の変容がテーマだったかな、という印象です。

そして、そのグローバリズムは国家が管理して進めすぎてはならないと主張するヴォルフガング氏と、グローバリゼーションによって進む移民の移動を積極的に受け入れることで勝ち組国家となると主張するホリフィールド氏は、ある意味グローバリズムに対して真逆の考え方をしているとも捉えることができ、双方の立場を勉強できるのはとてもおもしろかったです。

 

これからの資本主義がどうなっていくのか。

視野を広くして注意深く見ていくことが必要そうです。