本から明日をつくる

本と旅が趣味の大学院生です。色んなジャンルの本の感想とともに、旅の記録を書いています!

【書評】働きつつ、NPOに尽力するという新しい生き方~慎秦俊『働きながら、社会を変えるービジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む』

今回紹介するのは、慎秦俊『働きながら、社会を変えるービジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む』(英治出版)です。

 

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この本は、著者慎さん自身の生き方を記したもので、ビジネスマンとして働きつつ、週末などの休暇を使って児童養護施設の子どもたちに対して何かできないかと画策してNPOを立ち上げた話です。

 

ちなみに、子どもの貧困について書いたルポ本を以前読んだので興味があったらぜひそちらも見てみてください。

 

honkaraasuwotukuru.hatenablog.com

 

 

要約

  • 児童養護施設に住み込みしてみた実体験が語られる
  • 子どもの貧困・養護施設の実態について職員さん・子ども両サイドから詳しく分析されている、その実態は苦しいものばかり
  • 仕事をしているからこそ、外部だからこそできることもある、世界を少しずつだけど変えていくことができる

 

大事なのは「機会の平等」

あることをきっかけに著者は茨城県にある児童養護施設を見学しに訪れます。

そこで見たものは、ぼろぼろの施設、でもそこにいても元気な子どもたち、それを支える過酷な労働環境でも働く職員たち・・・。

しかし帰るときに「また来るよ」と言うと「どうせもう来ないんでしょ」と言われたそうです。

その日から、働きながら、それでもできることを著者は模索し始めたのでした。

 

児童養護施設にいる子どもたちは大抵親からの虐待や親の経済苦など複雑な過去を抱えている場合が多く、愛情を受けて育っていないケースが多いんだそう。

そのような子どもたちにどうアプローチするかが課題だと当初は考えたそうです。

 

ふと、以前「若者力大賞」という式典に出席させてもらった時に孤児院出身の女優サヘル・ローズさん(この本にも少し登場します)が、施設の子どもは愛情をもらった経験がない、だから大人をなかなか信用できないと話していたのを思い出しました。

 

サヘル・ローズさんのスピーチについて書いた記事はこちら。

honkaraasuwotukuru.hatenablog.com

 

 

外部の人だからこそできることがあった

最初の頃は心の回復のための子どもたちの集まりを開いてみようとか考えてたそうです。

しかし、職員さんから、「心の回復は一朝一夕でできるものではない」と言われて別のやり方を探したのだそうです。

 

そこで実際に児童養護施設に住み込みをして、子どもや職員さんたちと実際の生活を送ってみたそうです。

その結果気づいたのは、心の回復はその専門の人こそがやるべきことで素人が手出しすることじゃない、ということでした。

だからこそ、外部の人間だから、働いている知識を活かして(著者は金融業界で働いているのですが)、施設改修のための資金調達などならできるという結論に至り、今の活動につながったようです。

 

 

働きながら社会を変えるという新しい生き方

この本から学べるのは、働きながら、ちょっとした時間をつかいながら社会貢献していくこともできるんだ、ということです。

ぼくは社会起業家と呼ばれる人たちの生き方に興味があって、それがきっかけで関連本のこの本を読んだわけですが、こういうやり方もあるのかと少し衝撃を受けました。

 

著者にとっては、社会問題は「子どもの貧困・機会の不平等」にありました。

自分が解決したいと思える社会問題は何だろう?

あるなら、こういうやり方でアプローチすることもできるんだ。

ということが分かりました。

 

筆者が言うには、大事なことはまず知ること、そしてそれを他の人に知らせてあげること。

完璧な理想の社会の実現というのは無理だろうけど、そうしたちょっとした行動が徐々に大きくなって少しずつだけど社会は良くなっていく、そう書かれています。

 

働き方・生き方がどんどん多様になっている現在、こうしてまた新たな生き方ができていくのでしょう。